いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

【HND-名古屋】家も金も仕事もない私が、なぜ、生きることができているのか。

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自分自身を奴隷として解放する奴隷経済FREE(又の名を奴隷解放運動)を開始して、三日目になる。非常に有り難いことに、様々なご連絡をいただき、明日からは名古屋に、月末には台湾経由でバリに行くことになった。台湾では桃園空港でツイキャス配信をやることになり、バリでは瞑想会のゲスト(?)として招待をしていただいた。来年は、オーロラを見るためにフィンランドまで行くことになるかもしれない。


前回の投稿でも書いたが、いま、一冊の本を執筆している。出版社は何も決まっていない。ただ、自分が書きたいから書いているだけだ。家がなくなってから現在に至るまでの日々をまとめたものになるのだけれど、過去を振り返りながら「奇跡は余白に舞い込む」という言葉と「調子に乗ったら即死する」という言葉を、昔の自分が発していたことを思い出した。奇跡は余白に舞い込む。そして、調子に乗ったら即死する。大切なことは、自分に起きている現象を、楽しみながらも冷静に観察すること。


自分に起きている現象。

家も金も仕事もない私が、なぜ、生きることができているのか。これは、自分でも非常に興味のあるテーマで、出会う人々と一緒に考えたりしている。普通、金がなければ何かを手に入れることは難しい。定期的にうまい飯を食うことも不可能で、海外旅行なんてもってのほかだ。しかし、何も持たない私は、何も持っていない癖に美味い飯を食べたり、頻繁に海外に足を運んでいる。この現象は何だ。誤解されると困るが、私は自分に起きている謎の現象を自慢したい訳ではない。ただ、一緒に考えてみたいだけだ。

自分に起きている現象を説明する際に、ひとつ、過去に体験した非常に印象的だった出来事を思い出す。およそ二年前、私は、キッチン付きのスタジオを貸し切って参加費無料のイベントを開催した。場所代は私が負担した。そして「誰でも遊びに来てください。定員は20名程度で、参加費は無料です。料理もできるので、料理が好きなひとは食材も自由に持ち込んでください。ただ、食材費は実費になるので無理のない範囲で大丈夫です。もちろん手ぶらの参加も大歓迎です」というようなアナウンスをした。

Mさんの奇跡。

そのイベントに、Mさんという男性が来てくれた。Mさんは「僕は料理が好きなのですが、普段は一人暮らしでなかなか料理をする機会がないので、料理をしてもいいですか?」と尋ねた。私は「もちろん!」と答えた。Mさんは「ありがとうございます!ちなみに、予算などはあるのですか?」と尋ねた。私は「予算?なんですかそれは?」と思った。もしかしたら、Mさんは(食材費も坂爪が負担してくれるものだと)勘違いをしているのかなと思った。

しかし、勘違いをしていたのは完全に私だった。

私は「誠に申し訳ありませんが、食材費はMさんの負担になるのです。だから、千円でも五百円でも、Mさんの無理のない範囲で食材をご用意していただき、それで何かを作ってもらえたらそれだけで充分です」と答えた。すると、驚いたことに、Mさんは「ということは、逆に、大量の食材を買い込んできてもいいということですよね?」と答えた。Mさんが尋ねた予算とは、たとえば千円以内の食材で何かをつくることとか、そういった設定金額の上限があるのかどうかの確認に過ぎなかったのだ。

結果的に、その日、Mさんはおよそ6000円以上の食材を自腹で買い出し、会場に持ち込んでくれた。そして、スパイスをふんだんに使ったべらぼうに美味いカレーを作って、参加者の皆様に提供してくれた。ほかの参加者たちは皆でわいわい会話やら何やらを楽しんでいる横で、Mさんは、ひたすらカレーを作り続けていた。まるで奴隷のように、横で遊び呆けている愚かな貴族達を横目に、馬車馬のように働き続けていた。

食べてくれてありがとうございます。

結果的に、Mさんはイベントの最中も、ひたすらひとりで料理を作り続けていた。そして、終了間際に「できました!」と叫んだ。最高のカレーが仕上がった。「おお!」と、盛り上がる参加者の皆様。それはそうだ、無料で美味いカレーが食えるのだ、その場にいた誰もが瞬間的に盛り上がった。そして、Mさんに「つくってくれてありがとう!」と言った。すると、驚いたことに、Mさんは「いえいえ!こちらこそ、食べてくれてありがとうございます!」と言った。食べてくれてありがとうございますと言ったのだ。

私は「これは何だ」と思った。つくってくれてありがとうございます、なら、わかる。無料で美味いカレーが食えることは、誰が見てもラッキーだ。しかし、食べてくれてありがとうございますとは何事だ。Mさんは自腹で6000円も払っている。皆が会話などで盛り上がっているにも関わらず、Mさんは参加することもできずにひとりで料理をつくっていた。得をしているのは参加者たちで、損をしているのはMさんになる。そのMさんが「ありがとうございます」と言っている。

これは何だ。

私は定期的にイベントを開催していたのだけれど、イベント終了後、参加者の方から「今日はありがとうございました!」という内容の連絡をもらうことがある。イベントに感動してくれたひとほど、そういった連絡を送ってくれる。驚いたことに、その日、誰よりも最初にお礼のメールを送ってくれたのはMさんだった。そこには「今日はありがとうございました!とても楽しかったです。またやってください!」と書かれていた。

与える喜び。

振り返って見た時、カレーが出てきた瞬間、あの場において誰よりも楽しそうにしていたのはMさんだったことを思い出した。そして、私は思った。受ける喜びよりも、もしかしたら、与える喜びの方が大きいのかもしれない。Mさんは明らかに損をしている。それにも関わらず、Mさんは明らかに嬉しそうにしていた。大袈裟な表現になるけれど、もしかしたらこの日の出来事の中に、これからの経済の礎を築く重要なヒントが隠されているのかもしれない。

いま、当たり前のことだけれどサービスを受ける側が金を払っている。ご飯を食べるならご飯を食べるひとが、マッサージを受けるならマッサージを受けるひとが、何かを買うなら何かを買いたいひとが、対価を払ってサービスを受けたり何かを手にしている。しかし、これでは「何も持たないひとは何も得られない」ことになってしまう。それなのに、何も持たない私が様々なことを得ているのはなぜか。ここには『交換』ではない、何か別の原理(たとえば『循環』のようなもの)が働いているような気がしている。

誤解を恐れずに言うと、いまの私に起きている現象は『交換』よりも『循環』に近い。そして、多くの人々が『交換』というシステムに疲弊しているように見える。いつまで金を稼げばいいのか。いつまで何かを作り続けなければいけないのか。いつまでいまのようなスタイルで働き続けなければいけないのか。多分、交換には限界がある。重要なのは、交換よりも循環だ。受ける側が金を払うから循環が起こらない。与える側が金を払うようになったら、どうなるのだろうかと考えている。

仕事には三種類ある。

話が長くなりそう(既に長くなってしまった)なので、突如、まとめにはいる。仕事には三種類ある。金を稼ぐための仕事と、無料でもやる仕事と、金を払ってでもやる仕事の三種類だ。多分、必要なのは三番目の「金を払ってでもやる仕事」であり、これを『趣味』でも『娯楽』でもなく、仕事として認識することが重要だと思っている。

現在の私は「受ける側がお金を払うから、循環が起こらない」のだと睨んでいる。たとえば、すべてのサービスが無料で受けられる世の中を想像する。すべての料理は無料で食べられる。すべての住居は無料で手に入る。小物も、雑貨も、家具も、衣類も、すべてのものは無料で手に入る。なぜならば、与える側のひとが負担をしてくれているから。受ける限りは永遠に無料で、自分が与える側にまわりたくなった時に、はじめてお金を出す側にまわる。そういう在り方について、あれこれ思いを巡らせている。

そんなことは可能なのだろうかと、頭がパニック状態になる。脳内で、クレヨンしんちゃんのオープニングテーマが流れている。受ける限りは永遠に無料で、与える側にまわった時に、はじめてお金を出す側になる。いま、私に起きている謎の現象はこの『循環』のシステムで説明できそうな予感がしていて、思索は続く。これは『センスのある損』という考え方にも通じるのかもしれない。「金を払ってでもやりたい仕事」という言葉の中に、多分、ヒントが隠されているのだと思う。


やりたいことはやろう。


奴隷経済FREEをはじめて、まだ、三日目でしかない。それでも、たいくさんの方から連絡をいただいた。多くの人々の考え方や悩みに触れて、いま、時代は大きな変わり目にあるのだということを改めて実感する。様々なひとびとが、様々な問題を抱えている。古いシステムの限界を乗り越えて、新しい何かを築くこと、これがいま、比較的急ピッチで求められているように感じている。

試してみたいことがいくつかある。実験的に繰り返してみたいと思う。新しいことをやると、必ず、一定数の割合で批判や罵詈雑言の言葉が届く。無理解に苦しむこともあれば、憎しみが生まれたり、怒りに溢れるひとや、悲しむひとも出てしまう。それでも、自分が「これだ」と思うものがあるのならば、なりふり構わずやってしまおう。大事なことは「人に優しくあること」と「いまをしっかりと生きること」の、二つくらいだ。それさえ意識できていれば、きっと、何をしても大丈夫だ。


人生は続く。

坂爪圭吾 KeigoSakatsume《ibaya》
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