いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

【最終日】家を捨てよ、町へ出よう。 - 生きるためには必要ないけれど、生きていることを実感するために必要なもの -

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【1日目】から【5日目】までの流れは以下のリンクよりご覧ください。

【1日目】家を捨てよ、町へ出よう。 - 家の無い生活を送ってわかった5つのこと -

【2日目】家を捨てよ、町へ出よう。 - 飛び込む前は怖くても、飛び込んでみるとどうにかなることが9割 -

【3日目】家を捨てよ、町へ出よう。 - 奪い合えば足りず、分け合えば余る -

【4日目】家を捨てよ、町へ出よう。 - 自分自身が「作品」になる -

【5日目】家を捨てよ、町へ出よう。 - 「どのような人生を送りたいのか?」という問いが人生を決める -

自分の心を動かすもの。自分の心に突き刺さるもの。自分の心を弾ませるもの。自分の心を開くもの。自分の心を傷つけるもの。自分の心を治療するもの。自分 の心を取り戻すもの。自分の心に潤いを与えること。生きていることを実感するもの。私にとって、人の心を動かすものはすべて芸術であると思っているし、生きとし生けるものは誰もが皆アーティストであると思っている。

【最終日~2014年3月16日(日)~】

7:00 目覚める@恵比寿

恵比寿のシェアハウスに泊まった私は、早朝の朝日に感動する。自分には家も金もないにも関わらず、今、こうして素晴らしい環境の中で朝日を眺めることができている。TOPの写真が、恵比寿のシェアハウスの共有スペースから撮影したものになる。

9:00 「空と麦と」の黒豆パンに感動する@代官山

くみこ先輩と朝の恵比寿を歩く。代官山に美味しいパン屋があるというので、そこまで一緒に歩いた。9時に到着したが、お店はまだ開店していなかった。それでも、私たちが遠慮なくドアを開けると店主さんは優しく迎えてくれた。既に出来ているパンなら売る事が出来るというので、私たちはこのお店名物の黒豆パンを購入した。美味しさに胸が弾けた。今までこんなに美味しいパンが存在していることを知らなかった自分の人生は一体何だったのだろうかと思った。

10:00 記憶喪失になる

いくら思い出しても、この時間帯にどこにいたのかを思い出せない。私は、昨夜くみこ先輩と話したことなどを家出のすすめ。 - とりあえず一週間くらい、家に帰らない生活をしてみると人生が変わる -というタイトルでブログ記事にしてまとめる。私自身、本当に人生が変わった。人生が変わったというよりも、世の中を見る目がまるで変わった。

14:00 六本木リバ邸在住の20歳の天才と会う@渋谷

【1日目】で知り合ったリバ邸の天才青年と話す。名前を石原昂城と言う。彼には「触媒の才能」がある。ウォルト・ディズニーで例えると分かりやすいかもしれない。ディズニーはディズニーランドを作ったが、当たり前だがスプラッシュマウンテンを作ったのは彼ではなく大工で、ミッキーの中に入っているのは彼ではなくて他の誰かだ。ディズニーは決して何も作っていない。ただ、自分の発想を周囲の人間に伝えまくり、その構想に興奮した(あるいは同意した)人間達が、彼の理想を形にした。ディズニー自身は何も作っていない。彼の仕事は「発想する」ことだった。彼の発想に周囲の人間も魅了され、ひとつの世界(ディズニーランド)を築き上げて、世界中の人間を魅了している。石原昂城という名前を、2020年までには多くの人が知ることになるだろうと思った。

17:00 東京えちごまつり作戦会議を開催する@渋谷

この時間帯になって、突如「今日、新潟に戻ろう」という気持ちが自分の中に芽生えた。理由は曖昧だが、とりあえず一旦戻ろうという気持ちになった。新幹線は間に合わないので、高速バスの予約を取った。

私は「東京から新潟を起爆する」というコンセプトで東京えちごまつりという任意団体的なものの代表的なことをやっている。今後の活動MTGを渋谷で開いた。作戦会議とは名ばかりで、「佐渡島をマゾヶ島へ」とか「佐渡おけさをマゾおけさに」とか「シーサイドからスーサイドを減らす」とか「スペインのトマト祭りに世界中から人が集まるように、新潟からも米騒動という世界的なイベントを生み出そう」とか「真夏に雪を降らせよう」とか「表参道をコンバインで疾走しよう」とか、出て来るアイデアはどれも非常に子供じみている。だがしかし楽しい。あとは実現可能なものから実行に移すだけだ。細かいことは気にしない。楽しくなければ動けない。怒られないように考えるのではなく、怒られてから考えよう。

24:30 新潟行きの高速バスに飛び乗る@新宿

私は高速バスがあまり好きではないけれど、どうせ漫画喫茶で眠るくらいならと思って、宿泊も兼ねて新潟に戻ることにした。「バスの中で今までの出来事を振り返ろう」と考えたら、狭い高速バスの車内もそれほど負担には感じなかった。だがしかし、途中で果てしない悲劇が起こった。

28:00 謎の腹痛と吐き気で意識が朦朧とする@高速バスの車内

突如、激しい腹痛に襲われた。痛みで大量の汗が流れる。激痛による吐き気までしてきて、意識が朦朧とする。これはやばいと思った。目の前が曇る。抑えても抑えても呻き声が漏れる。そして何よりも最悪なことに、このバスにはトイレが付属していない。私は軽い錯乱状態に陥り、運転手さんに「すみませんが、次のパーキングで止めてください」とお願いした。お願いしたというよりも懇願した。自分がいかにやばい状態なのかを真摯に激しくアピールした。しかし、バスは今まさに超絶長いトンネルに突入したばかりで、このトンネルを抜けるには後15分はかかるという。私の錯乱状態は「バスにトイレがない」「トンネルを抜けるのに15分かかる」という事実によって加速度を上げて、嗚呼、私はここで死ぬのかと思った。

私は耐えた。耐え続けた。そして自らに念じ続けた。大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、きっとどうにかなる。意識を痛みに集中させるのではなく、意識を錯乱状態に集中させるのではなく、意識を無へと集中させて痛みが通りすぎるのを待った。今までの人生で最も長い15分間だった。バスがトンネルを抜けた。バスがパーキングに着いた。パスの扉がプシューっと音を立てて開いた。私は駆け出していた。脱いでいた靴を履き直す余裕すらなかったので、夜露で湿った路上を靴下のままで駆け出して、九死に一生を得た。

私は、この高速バスの中での出来事を「神の制裁」と名付けた。東京生活で調子に乗っていた私に、強烈なパンチを浴びせることで私の目を覚ましてくれた。神は私に「とりあえず一回死んでおけ」ということで私に激痛のプレゼントを与えてくれた。あまり調子に乗るなよ、と。このまま行くとお前はやばいことになるからとりあえず一回死んでおけ、と。神の素晴らしい所は、決して命までは奪わないことだ。今では私もピンピンしている。しかしここで一回死んでおかなかったら、躁病的な何かに侵されて暴走していたかもしれない。神は私たちに「命は有限であるということ」「いつか必ず終わりが来る」ということを教えてくれる。忘れかけていた『敬虔さ』を呼び覚ましてくれる。

この日に私が学んだ教訓はたったひとつ。

①生きるためには必要ないけれど、生きていることを実感するために必要なものがある。それが「生きる」ということだ。

私は芸術を愛している。芸術は生きるために必要ない。別に音楽がなくても映画がなくても絵画がなくても、誰も困らずに生きていくことができる。しかし、芸術がなければ「生きていることを実感する」ことができない。生きるためには必要ないけれど、生きていることを実感するために、いわゆる芸術というものは私の中で欠かせないものになっている。

私は生きていることを実感したい。

どれだけ自分の心が動いたかが人生の豊かさを決めると思っているし、どれだけの人と深く繋がることができたのか、死ぬまでの間にどれだけの歓びに触れることができるのだろうか、そういうことを考えながら生きている。楽しさや嬉しさだけでなく、悲しみや醜さからも何かを摑みたい。自分が人間として生まれてきたことを楽しみたいし、自分が抱く感情をどこまでも味わいつくして死にたいと思っている。

芸術とは、何も重苦しいものではない。

自分の心を動かすもの。自分の心に突き刺さるもの。自分の心を弾ませるもの。自分の心を開くもの。自分の心を傷つけるもの。自分の心を治療するもの。自分の心を取り戻すもの。自分の心に潤いを与えること。生きていることを実感するもの。私にとって、人の心を動かすものはすべて芸術であると思っているし、生きとし生けるものは誰もが皆アーティスト(創造主)であると思っている。

生きるためには必要ないけれど、生きていることを実感するために必要なもの、それが「生きる」ということだ。「生きる」ことを諦めてはいけない。東京生活を終えて、私は私に言い聞かせている。「生きる」ことを諦めてはいけない。「生きる」ことを投げ出してしまってはいけない。「生きる」ことから逃げてはいけない。「生きる」ことに真っ向から立ち向かって、どんな状態になろうが血を流しながら(そして時に高速バスの中で激痛に悶えて嗚咽を漏らしながら)もにっこり笑えば、必ず道は開ける。人生は泣くか笑うかのどちらかしかない。それならば笑おう。

生きるためには必要ないけれど、生きていることを実感するために必要なもの、それは「生きる」ということだ。人生は泣くか笑うかのどちらかしかない。それならば笑おう。

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「はじまるわね。新しい場所、新しい事、新しい人。大変よね、不安よね。あのね、少しだけ思い返してみて、離ればなれになった友達を。道は違うけど、同じ不 安よね。だからこう思って。みんな頑張って、わたしも頑張るよって。きっとね、みんなもあなたを応援してるわ。さあ、頑張りなさい」

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坂爪圭吾 KeigoSakatsume/ibaya
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