いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

現状を打破する道は唯一つ、自分が恐れていることをやることだ。

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2012年10月13日に、新潟スタジアムビッグスワンでイベントを企画した。

アルビレックス新潟というサッカーチームのホームグラウンドでもある新潟スタジアムは、キャパ4万人という収容力を誇る。この広大な敷地で運動したら快楽を得られると思い、それとなくHPを見たらなんと半日3万円で貸し切れることが判明した。私は驚愕した。結婚式の二次会の会場よりも安いじゃないか。あの広大な敷地を3万円で好き勝手に使えるとは、なんということだ。私は興奮で打ち震えた。

導火線に火がついて発奮した私は、気が付いたら電話をかけていた。会場を使わせて欲しい。そう伝えると、担当者から即刻OKの返事がきた。私は再び震えた。とんでもない事をしてしまった。3万人収容のスタジアムを借りてしまった。何をするかも考えていなかった。すると担当者はあろうことに「何をする予定ですか?」と尋ねてきた。私は狼狽した。なんてったってノープランなのだ。「何をすればいいと思いますか?」と逆に聞きたかった。私は、「運動をしたいと思っています」という返答で濁した。時は2012年の7月だった。開催まで残り3ヶ月。さあ、困ったことになったぞ。何をすればいいのだろうかと考えて結局運動会をすることにした。しかし普通の運動会じゃつまらない。そう、私の信念は「普通じゃないことをした記憶が思い出になる」なのだ。それならば普通じゃない運動会をしようとサッカーの神(ペレ)に誓った。

運動会の参加費は1000円にした。30人集まれば会場費用はペイできる。諸経費分は自分が負担すればいい。30人なら頑張れば無理じゃない。とにかく30人集めよう。そう思い、とにもかくにも集客を始めた。しかし、困ったことに私には友達が少ない。潤沢な資金もないから告知にお金もかけられない。とりあえず友達に手当たり次第に声をかけた。新潟在住者以外にも声をかけた。なぜなら私は必死だったからだ。当日の私はのべつまくなしだった。すると、驚くことに20名程度が集まった。しかも半数以上はわざわざ東京から新潟まで来るという。バカな友達がいて良かった。私はバカに救われたのだ。これで残り2万9980人だ。

さて、残りをどうやって集めようかと考えたが、困ったことに何ひとつグッドアイデアが浮かばない。結局最後までグッドアイデアが浮かぶこともなく、最終的に開き直った。集まらなかったら集まらなかったで面白いじゃないか、どうせあとから笑えるネタになる。そう開き直ることにした。物事の大半は過ぎれば笑い話になる。私は楽観的に構えた。そしてこの楽観主義が裏目に出たのが当日のことだ。

運動会が行われるまさにその日、40名の参加者が集まった。初対面の人もたくさんいた。スタジアムの下見すらしたことがなかった私は、実際にスタジアムに入ってその広さに恐れおののいた。なんだこれは。広すぎる。こんなのは無理だ。この広さを私ひとりでカバーできるわけがない。マイクだって借りていないんだぞ。俺にあるのはホームセンターで買ってきたサイレン付きの安い拡声器だけなんだ。こんなもので声が届くわけがないじゃないか。そもそもこんなイベントをやること自体が初めてなのだ。そして、世にもおぞましい単語が私の脳裏をよぎった。死。死ぬ。私は死ぬ。私は広さに殺される。迫り来る死、死、死、あるのみだ。そして私は死を受け入れた。よし、死のう。それならば死のう。みんなには悪いけれど、ここで一緒に死んでもらおうと開き直って私はもうすぐ始まろうとしている死の運動会の準備にとりかかった。スタッフは私ひとりだ。あとはもう、なるようにしかならないのだ。それならば(どうせ死ぬのだから)思い切りやろう。

(当日のプログラムの説明は長くなるので省略する)

話が長くなってきたので突然まとめに入る。私だけでなく、参加者の誰もが広さに驚愕した。恐れおののいたのは私だけではなかったのだ。しかし、運動会が終了する頃には誰もがその広さに慣れていた。当たり前のように3万人を収容するスタジアムの中を駆けずり回り、体を動かすことを楽しんだ。人間は誰もが適応力を持っている。最初は驚愕した広大なスタジアムでさえも、1時間もいれば慣れてしまうのだ。

運動会は無事に終了した。入場した時はとても手に負えないと感じた広さでさえ、退場する頃にはどうにかなるものなのだと分かった。そして私は気が付いた。私が恐れおののいていたのは、決してスタジアムの広さに対してなどではなかったのだ。私が恐怖を感じたのは、自分にはとてもできないと思うことをやるというそのことに対してだったのであり、私の敵は私だった。

繰り返しになるが、人間はどんな環境にも慣れる。最初はとても無理だと思ったことでも、一度飛び込んでみれば必ず何かを得る。そして、次回同じようなことをやるときは必ず前回よりもうまくやることができる。耐性ができるのだ。私はビッグスワン(的な広さの会場で運動会をやるということ)に対する耐性を獲得した。私の世界は拡張した。そして私は思う。当日の私がビッグスワンを借りるというある種の無謀を行ったのと同じように、今の私も新しいチャレンジを行う必要があるのだと。同じようなことを繰り返していても、新しい何かを得ることはできない。現状に行き詰まりを感じているのなら、それを打破する最適解はひとつ、自分が恐れていることをやることだ。無謀なことをしていないのは、挑戦していないのと同じである。新しいことに挑む時は必ず不安にもなるが、不安になるというのは挑戦している何よりのサインだ。大丈夫、きっとどうにかなる。どうにかなってしまうのが人生なのだと、自らにそう言い聞かせている。

現状を打破する道は唯一つ、自分が恐れていることをやることだ。

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坂爪圭吾 KeigoSakatsume/ibaya
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