いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

【希望論】「希望が与える力」について。ー 人間を磨耗させるのは「多忙な日々」でも「複雑な人間関係」でも「金銭的な不安」でもなく『希望の欠落』である。

2015年1月17日の土曜日に、私は成田空港の国内線ロビーで途方に暮れていた。この日の18時から、私は札幌で開催されるイベントに出演予定だったのだが、雪の影響で飛行機がすべて欠航になった。予定されていたイベントは中止になり、私は東京で完全に足止めをくらうことになってしまった。

正直に言えば、私の身体はボロボロになっていた。連日の過密なスケジュールにより「ひとりになりたい欲求」が爆発してしまった私は、各地の漫画喫茶で宿泊する日々を送っていた。漫画喫茶の狭い個室では、体力を完全に回復させることは難しい。しかし、私にはそれ以外の方法が見つからなかった。飛行機の欠航によりこの日の宿を探す必要が生じたが、成田のホテルを取れるほどの所持金もなく、かといって「誰か私を泊めてください」とお願いできるほどの気力も体力も残されてはいなかった。「また漫画喫茶に泊まるのか」と考えるだけで気分も滅入り、私のボディ&ソウルは完全に磨耗していた。

しかし、死ぬことと同じように避けられないことがある。それは生きることだ。私は自身のFacebookから「飛行機が欠航になったので、完全に時間が出来た。東京界隈で時間のある方は会いましょう」という内容の投稿をした。これが精一杯のアクションであり、誰か私を泊めてください」とまでは言えなかった。しかし、この投稿を通じてひとつの奇跡が起きた。過去に一度だけお会いしたことがある、ひとりの女性から連絡が届いた。

「もしよかったら東京で開催されるイベントに一緒に行きませんか?その後、一時間程度でも話せたら嬉しいです。東京のホテルを代わりに予約しておきますので、必要であればお声掛けください

私のボディは如実な反応を示した。神が降臨した。私はひとり「まじですか!」と絶叫した。そんなことがあってもいいのですかと喜びに打ち震えた。そして、私は脊髄反射的にお言葉に甘えることを決断した。甘えよう。甘えまくろう。自分のハートが感じる喜びに従順に生きよう。一人でも生きられると強がるエネルギーがあるのならば、女性に感謝の気持ちを伝えることに全力を注ごう。そう誓った私は「行きます!」と即座返信をし、そして、革命的な変化が自分に発生していることに気がついた。

あれだけボロボロになっていると思っていた身体が、女神降臨により今夜ゆっくりと横になれる空間がある!」という希望が与えられたことにより、完全復活を遂げていたのだ。別に、まだ横になれている訳ではない。成田空港でひとり佇んでいるという状況においては、何も変化はない。ただ「横になれる」という希望が与えられることによって、まるで「もう横になれている」かのような充足のエネルギーを(成田空港にいる時点から)獲得することが出来た。私のボディは完全復活を遂げたのだ

そこからの私が半端なかった。女性に会うまでの僅かな時間の中で、溜まりまくったメールの数々を音速で返信し、「どりゃー!」と叫びながら送信ボタンを押し続け講演予定のゲラを作成し、来月以降の航空券を予約して、会いたい人に「会いたいです」とデリシャスに伝え、岩をも貫く集中力で参考文献を読み漁りボロボロの状態では到底成し遂げることは出来ない幾多のパフォーマンスを発揮した。

これが「希望が与える力」なのだと思った。

誤解されると困るが、私は「ホテル代を払ってもらった」ことや「私の半端ない(見る人が見たら躁状態に見えるような)事務処理能力」を自慢したい訳ではない(本当は自慢したいのかもしれない)。私の主張は「希望がなければ生きていけない」ということであり、成田空港でひとり「また漫画喫茶に泊まるのか」と悲嘆に暮れていた時点では、私の中から「希望」と呼べるものが完全に欠落していた。私の身体を著しく磨耗させていたのは「連日の過密なスケジュール」でもなければ「漫画喫茶に宿泊する日々」でもなく、それは「希望の欠落」によるものだった。

翌日の飛行機も遅延が続いた。

連日の欠航や相次ぐ遅延を前にすると、まるで「来るな」と言われているように感じてしまう。「自分は北海道には縁がないのかもしれない」などと思い込みかけてしまっていたし、そのように思い込んだ方が楽になれたのかもしれない。しかし、これではいけない、これでは希望が欠落したままじゃないかと思った私は「誰かひとりでも待っていてくれる人がいるかもしれない」と、嘘でもいいから自分を奮い立たせることにした。大幅な遅延は続いたが、無事に飛行機は飛び、私はこの日予定されていたイベントに三時間遅れで登壇した。

イベント終了後、釧路から三時間かけて来てくれた男性が「絶対に来てくれると信じていました」と声をかけてくれた。その男性が「ずっと坂爪さんのブログを読んでいて、それで、、、」と口にした瞬間に、言葉が続かず男性の瞳から涙が溢れた。私は、すべてが報われるようなよろこびを覚えた。この瞬間に立ち会えただけでも「北海道に来てほんとうに良かった」と心の底から思うことができた。

嘘でも「誰かひとりでも待っていてくれる人がいるはずだ」と信じることが、諦めかけている自分を再び奮い立たせるエネルギーになる。「自分には無理だ」「仕方がない」「縁がなかった」と諦めるにはまだ早すぎることが、人生にはたくさんあるのかもしれない。必要なことは「嘘でも希望を信じること」だ。新しい希望が自分の内側から湧き出してくる限り、多分、何度でも人間は歩き出せる。

人生は続く。

坂爪圭吾 KeigoSakatsume《ibaya》
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