お願いだから、負けないでくれ。
愛媛県松山市からしまなみ海道を経由して広島に向かい、尾道迎賓館で開催されたイベントに登壇した後に、いま、兵庫県の三ノ宮にいる。最近、小学校の先生を辞めた(辞めたいと思っている)ひとと、頻繁に出会う。誰が悪いとか、何が悪いとか、そういうことは何もわからないけれど、つらそうに仕事をしている大人に育てられるこどもたちは、可哀想だなと思う。マイナスの感情が連鎖していかなければいいなどと、ひどく曖昧な希望を託すしかない。
尾道! pic.twitter.com/RtNJmhA9gv
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年5月12日
私のもとには、稀に、不登校のこどもを抱えた親御さんから悩み相談のようなものが舞い込むことがある。息子が不登校になりました、どうすれば学校に行きたいと思えるでしょうか。何もやりたいことがないと嘆くこどもに、親としてはどういう態度を取ればいいでしょうか。どうすれば、坂爪さんみたいな大人に育つのでしょうか。など。私の最終学歴は高卒で、学生時代は根暗で友達も少なく読書と煙草と音楽に溺れ、現在の職業は(限りなく無職に近い)不定、家があるんだかないんだかよくわからない、呼ばれる場所にはふらふらと足を運び、五年後どころか来週何処にいるのかさえもわからない、人様のお手本になれるような生き方は、とてもじゃないけれどできていない。
言葉に支えられて、生きる。
いやだなあと思うものを受け入れることは、いやだなあと思うものに自分も加担をしていることになる。自分の心が「美しくない」と思うものには、明確な拒否を示すこと。いやだなあと思うことを続けていると、美しくないと思うものを受け入れてしまうと、自分の存在まで醜いものに成り下がる。
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年4月9日
尾道で開催されたトークイベントで「私は、多分、言葉に支えられているのだと思う」という話をした。家もない、金もない、仕事もないという何もない状態の中で、私を支えてくれたものは『言葉』だった。安定はなくても、保証はなくても、心臓は身体中に血液を巡らせている、生命がある。私は、自分に残されている頭と体と魂を使って、そのときの自分が感じること、思うこと、自分を励ますこと、自分を突き落とすこと、自分の心を震わせていることを、言葉に残した。この作業はいまも続いていて、それは、言葉の中に「自分の生命を注ぎ込む」かのように、言葉を通じて自分が生きているということを確認するかのように、そして、これがなければ生きていけない自分に『言葉のエサ』を与えるように、自分に、見えない何かを与えていた。
そして、この、見えない何かによって現在の自分は生きている【生かされている】ように感じている。普通、それで飯が食えていない人間の生業を『職業』とは言わない。私は言葉を綴るが、言葉が金になることはない。誰かが原稿料をくれる訳でもなければ、何処かから印税がはいる訳でもないし、広告宣伝費を貰える訳でもない。私の言葉は、まず、金にならない。その点において、私を「作家」と呼ぶことはできない。しかし、私は、言葉を残すまさにそのことで生き、言葉を残すまさにそのことで生かされているように感じている。
言い換えるならば、私を支えてくれたものは「自分のこころ」になる。自分のこころを言葉にする。自分の言葉に自分のこころは励まされて、自分のこころは、再び「自分の言葉」を生み出していく。この、繰り返しの営みが自分の内側に無限の熱量を生み、自分自身を回転させるほど、空間に『不思議な磁場』が発生する。この磁場が何なのか、私はまだ何も知らない。私はまだ何も知らないけれど、ただ、この『不思議な磁場』の力によって自分は生かされているように感じている。
『モーターサイクルダイアリーズ』
今回の「わたり文庫無料郵送の一冊」は、エルネスト・チェ・ゲバラ著作『モーターサイクルダイアリーズ』です。この作品と直接的な関係はないのですが、ボリビアで捕虜となったゲバラが銃撃を躊躇う敵軍兵士に向けて放ったと言われている、最後の言葉が胸を撃つ。ご希望される方は、何かしらの方法で坂爪圭吾までご連絡ください。御当選(?)された方には、24時間以内に折り返しご連絡いたします。
※※※ こちらの本は、大阪府にわたりました ※※※
落ち着け、そしてよく狙え。お前はこれから一人の人間を殺すのだ。
【参考HP】わたり食堂・わたり文庫
お願いだから、負けないでくれ。
銀色夏生の詩に「すみわたる夜空のような」という題名のものがある。その内容は「何かがだんだんあいまいに死んでいくようなつきあいよりも、すみわたる夜空のような孤独を」という、とても短い言葉が織り成している。私の生き方は、人様のお手本になるようなものではない。だからこそ、不登校で悩み苦しむひとに対して、仕事や人間関係で悩み苦しむひとに対して、適切なアドバイスや具体的な指示を出すことはできない。私に出来ることは、同じような苦しみを抱えた過去のある、自分の血で書かれた言葉を綴ることだけだ。
瀬戸内海は、もう夏だ。 pic.twitter.com/GFMPwxuPg6
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年5月11日
俺はこう思う。俺はこのように生きる。嫌だなあと思うことを受け入れてしまったら、魂が腐る。自分を殺してひとに好かれるくらいなら、自分を出してひとから嫌われる方がずっといい。自分の心が「美しくない」と思うものには、明確な拒否を示すこと。たとえ、それでメシが食えなくなったとしても、このままダメになってしまうとしても、どこまでも、自分は自分のままでいたいのだ。この思いだけが、この願いだけが、これまでの自分を支え続けてくれたように、これからの自分を支え続けるものになるのだろう。そういうことを、何度も、何度も、震える心臓に刺青を彫るように刻み続けている。
星は誰のものでもないからこそ、みんなのものになり得るのだと思う。 pic.twitter.com/6d5ExuGlWX
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年5月12日
これまでの自分が自分に願い続けてきたように、自分と同じ部分を持つひとを見かけては「お願いだから、負けないでくれ」と、勝手に願う自分がいる。自分にはこの身体とこの精神しかないのだから、このままで生きるしかないじゃないかと、どのような生き方だとしても構わないから、胸を張って生きるのだと、顔を上げて、前を見て、何度でも、何度でも、威風堂々と歩き出すのだと、何度でも、何度でも、懲りずに言葉のエサを撒く。そして、過去に自分が励まされた言葉をかき集めては「届け、届け」と願い、放つ。希望とは、強さから生まれる思いではなく、自分を含めた人類全体に対して『生きろ』と願う弱さのバトンであり、あらゆるラインを超えて『永遠にそのままで行け』と願う、そうでもしなければ生きていけない弱さから噴き出した【血と汗と涙の滲み】だ。
学校に行きたくないとか、仕事に行きたくないとか、これらは我儘でも弱さではなく、心の底には「正当な理由」が必ずあると思う。必要なのは、それを押し殺す為の努力ではなく、それを言語化する為の努力だと思う。嫌だなあと思うことを受け入れ続ける日々を過ごすと、最悪の場合、魂が腐る。
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年5月13日
「泡になる」その想いは泡になる泡になって消えてしまうだから気にしなくていいこの想いも泡になる泡になって消えてしまう消えてしまうだろう
「抜け殻」二人の関係がよかった頃の言葉を思い出し つないでもそんなものには意味がない二人の関係がよかった頃の言葉は二人の関係がよかった時にだけ正しく機能する二人の関係が変わってしまった今ではそんな言葉などもうとっくに死に果てている見てみろただの抜け殻だおまえが抱いているものは抜け殻ではないか力をこめればすぐに壊れてしまうだろう聞きたくないかできないと泣くのか俺が壊してやるがどうだ愛というもののなれの果てを俺が教えてやるが どうだ愛しき君よ抜け殻など捨てて現実の二人を見てみろそこに希望があるのが見えないか
「白い空」羽ばたく鳥の遠い後ろにひろがる空白い空散りぢりになる葉っぱ風の音憧れたあの人憧れが消えていった消えてしまった今日白い空に羽ばたく鳥の広い背中にひろがる空
「希望」俺達はいっせいにおどろき あこがれたこの空の青さ 広さ見たこともない狭い路地の上に広がる青さ まぶしさいまなにか聞こえた?なにか胸が躍るようなものじゃなかった?
「すみわたる夜空のような」何かがだんだんあいまいに死んでいくようなつきあいよりすみわたる夜空のような孤独を
「君へ」君は好きなことを、好きなふうにやるべきだ。そのことが他人から見て、どんなに変でも、損でも、バカだと言われても、気にするな。だって彼等は、君の願いを知らない。君が何をめざし、何に向かっているのかを知らない。君は彼等とは違うものを見てるのだから。あの、強い思いだけを、繰り返し思い出して。そのことを忘れないで。他人の説教やからかいなど気にせずに、どんどんやりなさい。けして周りを見たらダメだ。仲間はいないんだ。すくなくとも途中には。君はやりたいように、どんどんやりなさい。やりたいことを。好きなやり方で。その行為が同時に君を救うだろう。その行為は同時に人をも救うだろう。そのことを忘れないで。銀色夏生「すみわたる夜空のような」(角川文庫)
人生は続く。
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坂爪圭吾 KeigoSakatsume
TEL 07055527106 LINE ibaya
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