いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

明日も生きていると思うなよ。

f:id:ibaya:20211201143456j:plain


岡山在住の方から連絡が届いた。文面から「これはすぐに行かないと大変だ」と思い、愛媛から岡山に行ける最短ルートを探した。先日お会いしたT様に私を尾道まで送ってくださいとお願いしたら快諾していただいた。T様は男前だ。ベンツをかっ飛ばして最高速度でぶっ飛ばした。昨日のしまなみ海道は横風が強く車体をもっていかれそうになった。それでもT様はかっ飛ばした。最高速度でかっ飛ばした。

 

おおまかなスケジュール

12月2日(木)神戸

以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)

 

出す。

電車を乗り継ぎ岡山の山間部に着いた。H様が車で来る。精神的にギリギリだと話すH様は最近友達を自殺で亡くした。何が苦しいのかわからないがとにかく苦しくなることがあり、呼吸ができず、胸が圧迫される。車内でH様は言った。仕事をしているが職場が合わず時折立っていられないほど疲れることがある。かと言って職場を変えれば済む問題だとは思えず、自分が変わるしかないことはわかっているのだが誰に何を話してもアドバイスをされるだけで本当の話をできている実感がない。こうすればいいよと散々言われるがそんなことはもうとっくに試している。だけど言い返す気力が自分にはないから結局一人になる。気力がなければお金があっても生きていけない。人間が嫌いだけど、どこに行っても人間はいる。だけど一人も嫌だ。一人はさみしい。私は本当の話がしたくて坂爪さんを呼んだのだと思う。

 

飲食店に到着した。H様は言った。食事をしていたら落ち着いてきた。不思議と胸の圧迫もない。坂爪さんがそのままだから自分もそのままでいられるのかもしれない。五年前に一度お会いした時はミーハーな気持ちが強かったが、いまは自分が本当に苦しい状態に置かれているからこそ言葉が刺さる。自分がギリギリだからこそギリギリを生きている人に会いたかったのかもしれない。自分のわがままでこんな僻地まで来てもらうことには気が引けたが、勇気を出して声をかけてよかった。食事をしながらH様はそんなことを話した。その後、会話の内容が徐々に私の気を使う方向に向かった。四国はどうでしたか。お疲れではないですか。そんなことを聞かれて違和感を覚えた私は「遠慮をしないでください」と言った。そんな話をするために私はここに来たわけではないし、私をここに呼んだわけではないと思った。長時間の移動をしたら疲れるのは当たり前だ。疲れなんてどうでもいい。どれだけ疲れ(させ)たとしてもそれでも話したかったことがあったはずだろうと思った。

 

そう言うと、意を決したH様は「そうですよね。私は、どこにいても相手の顔色を伺ってしまう悪い癖があります。だけど、自分で呼び出しておいて気を使っても仕方がないですよね。それでは、勇気を出して全部出します」と言って、自分の思いを吐き出した。私は黙って話を聞いた。途中何度か頷く程度で、何も言葉を挟まなかった。挟む余地はないし、挟む必要性も特になかった。何度も何度もH様は泣いた。人前でこんなに泣くのははじめてだと言った。だが、泣き終えた後にH様は印象的なことを言った。坂爪さんを通じて、私は、私に、話を聞いてもらいたかっただけなのかもしれない。自分でも不思議なくらい涙が出た。話しながら私はこんなに本音を押し殺して生きているのかと思ってびっくりした。だけど、出したいだけ出したら元気が出た。なんだか楽しくなってきました。そう言ってH様は笑った。

 

明日も生きていると思うなよ。

H様は言った。「これまでヒーリング系のセラピーに何度か通ったことがあるがこれだけ泣けたことは一度もない。先生や仲間から周囲を信頼して安心して泣いてと言われるが、常にどこかで本当かよと疑い続けていた。周囲に煽られて怒りや悲しみを出すこともあるのだが、爽快感よりも不快感の方が最後に残って気分が悪かった。だけど今はさっぱりしている。坂爪さんはセラピストに向いていますよ」と。セラピストなんて死んでもなりたくない、ただ、セラピーや怪しい講座に多額の金を払う暇があったらそのお金で俺と一緒に遊んでくれと思うことはある、場合によっては高額なセミナーより効き目はあると思います、そういうことを私は言った。

 

翌日、仕事をズル休みしたH様が岡山駅まで送ってくれた。H様の逸話が愉快だった。「昔から坂爪さんのブログは読んでいたのですがパートナーがこんなものを読んだら勤労意欲を失うとか言って読むことを禁止したのです。だから私はトイレでこっそり隠れて読み続けて、トイレを出るときに履歴を消していました。私みたいな隠れ読者はたくさんいると思いますよ」と。隠れキリシタンみたいでいいなと思った。いばや通信を読むと迫害をされるのか、迫害された人がいばや通信を読むのか、順序は謎だが迫害は好きだ。迫害と言えば坂爪さん、ということでH様は過去の体験談を話した。タントリックヒーリングという子宮を温めるセラピーを男性施術者から受けたことがあるのですが、施術の過程で抱き合うプロセスがあって、その時に思わず男性の頭を撫でてしまったのです。そしたら相手の男の人が「なんだか母性を感じました」とか言って、妻子があるのに私のことを好きになってしまって、何度も何度もLINEが来るようになったのです。これってどう思いますか。と。

 

自分が女だったら母性を感じたとか言われても微妙だなと思う気がするのですが実際はどうですかと尋ねたら、H様は「あなたにとって私が癒しになったらそれはよかったですねとは思いましたが、いまこの瞬間からあなたを男としては見ることができなくなりました、とは思いました」と言った。私は、オスのカマキリを思い出していた。オスのカマキリは最終的にメスのカマキリに喰われる。メスに喰われる部分だけを切り取るとあまりにも残酷だが、日常的にメスが引き受けている苦しさや大変さが半端ではないために、オスは自分が喰われる痛みを引き受けることによってはじめてメスと対等になれるのかもしれないと思った。オスのカマキリは、メスに喰われながら「これでようやくあなたと並ぶことができました」と思っているのかもしれない。そういうことを話したら、H様は「女として、なんだか報われる気がします」と笑った。笑いながらなんだかまた元気が出てきたみたいで、非常に危険な車の走らせ方をした。非常に危険な車の走らせ方をしますねと私が突っ込むと、楽しそうに笑うH様が「坂爪さんとなら死んでもいいと思っています」と言った。私は「俺は嫌です」と言った。H様は笑った。空はめちゃめちゃ晴れていた。

 

f:id:ibaya:20211201143457j:plain

 

人生は続く。

 

坂爪圭吾 KeigoSakatsume
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE http://urx2.nu/xkMu

 

f:id:ibaya:20211126074941j:plain

LINE ID ibaya