【FKS-福島県】火事場のユーモアと「試合はボロ負けしたけれど、今日のMVPは完全に俺だ」感。
過去に福島県で開催されたトークイベントに登壇した際に、聴衆の皆様からボッコボコに叩かれた経験がある。その時の体験を、昨夜、久しぶりに話していたら「面白いなあ」と思ったので、即興演劇の舞台役者・Aさんを聞き手に迎えてまとめます。
日々に大切なのは「軽やかさ」だと思う。自分の未来に不安を覚えたり、こうあるべきという思いに囚われてしまっている時は、思考も重く、感情も重く、身体も重く、日々に大切な軽やかさを失ってしまう。自分がいいなと思う方にふらっと行ってしまう軽やかさは、時に素敵な扉を開いてくれる。
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2015, 7月 24
福島県でボコボコにされた経緯
坂爪「前に、福島県で開催された参加費無料のチャリティーイベント(100人程度の規模)に呼ばれて登壇したことがあるんだけどね」
Aさん「うん」
坂爪「お客さんのほとんどは俺のことなんて知らないひとばかりで、だから、司会役の人が『今回のゲストは、家も金も仕事もない状態で暮らしている、いばや共同代表の坂爪圭吾さんです』みたいな感じで紹介をしてくれたのね」
Aさん「うん」
坂爪「でね、多分この紹介があまり良くなかったのかもしれなくて、お客さんには50代や60代の人たちが結構いて、俺が壇上にあがった時点で『なんだこいつは!(けしからん!)』的な視線を全身で浴びることになってしまって、やばいな、とか思いながら『坂爪圭吾です。新潟生まれの30歳で、現在は家がなくても生きていけるのかということを、自分の身体を使って試しています』とだけ話したのね」
Aさん「うん」
坂爪「そしたら、突然、会場の前の方に座っていた50代くらいの女性が『どういうこと?』ってめっちゃ不機嫌そうに言葉を発して、それから『家も金も仕事もないってことは、あなたはホームレスなの?』って、たたみかけるように話してきたのね」
Aさん「うん」
坂爪「でね、俺も『えっと、ホームレスと言えば、ホームレスかもしれません』みたいな感じで短い返答をすると、今度は別の50代くらいの男性が『それでは、君は、ひと様に迷惑をかけながら生きているということか?』って言ってきたのね」
Aさん「うん」
坂爪「でね、この質問にも『えっと、確かに迷惑をかけていないとは言えないのですが…』みたいな感じで返事をしたら、この瞬間から戦闘開始のゴングがカーン!!!って鳴って、また別の人達が『なんでそんなことをしているの?』とか『仕事をしようとは思わないの?』とか『ひと様に迷惑をかけていることを恥ずかしいとは思わないの?』みたいな感じで、ひたすらたたみかけてくるという形になっちゃって」
Aさん「すごいね」
坂爪「でね、ほんとうであればそれについてを壇上で話す予定だったんだけど、聴衆の皆様が『君は人生をなめているのか?』みたいなことをストレートに投げかけてくれるものだから、俺も『えっと、どうしてこういうことをやっているのかというと、世の中にはたくさんの《こうあるべき》と思われているものがありますが、必ずしもそうとは限らないんじゃないかなと思って…』とかまで話すと、また別のひとが『そんな態度で生きていけると思うのか?』ってたたみかけてくる、みたいになっちゃって」
Aさん「すごいね」
坂爪「でね、俺も『(完全にイメージだけで話されているから)これはもう何を言っても無駄だな』とか思っちゃって、別の方向にシフトチェンジをしようと思ったのね。というのも、このイベントには新潟からはるばる駆けつけてくれた俺の友達(ほっしー&徹くん)もいたから、聴衆の皆様に自分の考えを理解してもらおうとするよりも、この場を利用して、どうにかしてこいつら二人を笑わせよう、みたいな風に考えることにしたの」
デッドボールを浴び続ける中でホームランをかっ飛ばす瞬間
坂爪「でね、引き続き聴衆の皆様から『お前は感謝が足りない』とか『親に悪いとは思わないのか』とか『生活保護を受けているのか』とか『親の顔が見てみたい』とか『いまはいいけどこれからはどうするつもりだ』とか『結婚はどうするつもりだ』とか、言われたい放題の状況に置かれてしまって」
Aさん「『親の顔が見てみたい』とか、ほんとうに言われるんだね」
坂爪「俺もそう思った。すげー!って思ったよ」
Aさん「『感謝が足りない』っていうのもすごいね」
坂爪「すごいよね」
Aさん「まるで『感謝をしろ』と言わんばかりだね」
坂爪「うん」
Aさん「きっと、その人は普段から『感謝をされていない』ことがつらいんだろうね」
坂爪「でね、俺の友達も、ボコボコに言われている俺を見て『デッドボール受けまくってましたね』とか言ってくれたんだけど、まさにそんな感じで、ずっと『うぐぐ…』とか思いながら罵倒の数々に耐えていた(逆転ホームランのチャンスを伺っていた)んだけど」
Aさん「うん」
坂爪「そしたらね、このイベントには福島県の市議会議員をやっている50代くらいの偉い女性とかも来ていたんだけど、その人が『結局あなたは目立ちたいだけなんでしょ?』って言ってきたのね」
Aさん「うん」
坂爪「でね、その女性は、その日、全身真っ青のスーツを着ていたのね。まじで青いの、超青いの、誰が見ても『青っ!』って思うくらいの、全身真っ青のスーツに身を包んでいたのね」
Aさん「うん」
坂爪「でね、その女性から『結局あなたは目立ちたいだけなんでしょ?』って言われたときに、俺は、ボソッと『ぼくは青いスーツは着ません』って言ったのね。そしたらね、いままで黙って椅子に座っていた友達二人が、その瞬間、確実に少しだけゴトッ!って椅子から腰が浮いたの!!!」
Aさん「おー!」
坂爪「でね、俺も『しゃー!』ってなって、友達の方を見ながら『見たよね、いまのこの俺の発言見たよね!?』的な視線を送ると、友達の方からも『見ました!はっきりと目撃しました!』みたいな感じの視線が帰ってきて、よし、今日の俺はホームランを打った、試合はボロ負けしたけれど、今日のMVPは完全に俺だ、みたいな気持ちになることができたの」
Aさん「すごいねー!!!」
坂爪「そういってくれるかー!」
Aさん「ぼくは青いスーツは着ません」
坂爪「うん、言ったった」
Aさん「すごいよー!!!」
坂爪「そういってくれるかー!」
Aさん「それで、結局青いスーツの女性はなんて言ったの?」
坂爪「あんまり覚えていないんだけど『まったくあなたはすぐにそういうことを言う』みたいな感じで、より一層のガッカリ感を与えただけで終わってしまった気がするよ」
Aさん「そうなるかー。そうなるよね」
坂爪「だけどね、イベント終了後に友達と話したら『あの時のけいごさんは、野球でたとえるなら、観客席で見ている俺が三塁手だとしたら、けいごさんが相手チームのバッターで、相手チームでありながらもあまりにも美しい軌道を描くホームランを打つものだから、ぼくとしても敵ながらあっぱれ!!!みたいな気持ちになりました』っていってくれたの」
Aさん「たとえが面白いね」
坂爪「あとね、他の参加者のひとも、イベント終了後に『キリストが殺された時ってこんな感じだったのかもしれませんね!!!』とか言ってくれた人もいて、非常に印象的な一日になりました」
試合はボロ負けしたけれど、今日のMVPは完全に俺だ。
坂爪「結局何が言いたいのかというと、こいつらを笑わせることができたらそれでいいと思えるひとがいるということは、とても素晴らしいことだなあということです」
Aさん「わたしもふざけることが大好きだから、そして、ふざけることで頻繁に怒られることがあるから、その気持ちはとてもよくわかるよ」
坂爪「あの日のイベントも、もしも俺の友達が来ていなければ、俺は黙って罵倒の数々に耐えて終わるだけの一日になっていたかもしれないし、あのホームランも、俺だけの力で打つことができたホームランなんかではなくて、友達の存在によって生まれたホームランなのだ、みたいに感じています」
Aさん「素晴らしい友達だね」
坂爪「ユーモアって物凄い大事なことだと思うんだ。火事場のユーモアのおかげさまで、よし、今日の俺はホームランをかっ飛ばすことができた、試合はボロ負けしたけれど、今日のMVPは完全に俺だ、みたいな気持ちになることができたことは、ほんとうに最高の瞬間になった。そして、ユーモアを思い出させてくれるものは『こいつを笑わせることができたらそれでいい(たったひとりだけでも、わかってくれるひとがいたらそれでいい)』と思えるひとの存在なんだなあ、みたいなことを思いました」
Aさん「素晴らしい友達と、そして、青いスーツのおかげだね」
福島の自然には優しさを感じる。 pic.twitter.com/KzuPsZtxVO
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2015, 7月 24
人生は続く。
坂爪圭吾 KeigoSakatsume《ibaya》