いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

軽やかにいけるよ。いまよりももっと。

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GT400を聴きながらホノルルを歩く。幽閉。下手な動きができないため海岸でずっと寝ていた。拳銃を見た瞬間は怖かった。しかし、強盗を怖いとは思わなかった。脅している彼の顔が、何かにすがっているように見えた。拳銃と犯人に一致感がなかった。ホノルルは大都会だ。インディアンやアボリジニアルコール中毒になって堕落する理由がわかる。自然の中では生きるためにやることがたくさんあるが、都市の中では「金がなければ」なにもできない。結果、彼らは酒に溺れる。私は、多分、暗黒の青春時代を過ごしながらロックンロールに溺れていたのだと思う。反骨。それだけが「何もすることのできない」無力な自分を支えていたのだと思う。

 

 

東京出身ホノルル在住歴7年のN様と会う。もう、大阪よりもホノルルを近くに感じると話す。「飛行機の中でちょっと寝ていればすぐ着くからね」と。素敵だな。私はこれからホノルル空港まで歩く。飛行機の中で眠りたいから。体を疲れさせたいのです。私は、まだ、飛行機でハワイに来ることに慣れていない。だからN様の境地はまだまだ遠いが、徒歩移動なら慣れた。ここからホノルル空港は徒歩三時間程度だが「近いな」と思える。N様は飛行機移動に慣れていて、私は徒歩移動に慣れた。自分の中で(何㎞進むにはどれくらい時間がかかってどれくらい疲れるのか)基準ができることは嬉しいことだし、楽しいことだ。そういうことを話した。

 

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悲しみは力。

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これからホノルルを出て関西空港に飛ぶ。関西空港到着は8日午後20時。翌日9日11時発新潟行きの飛行機に乗るため、多分、今夜は関西空港界隈で野営(?)する。9日は新潟市内で暇。10日昼過ぎは長岡駅界隈で暇。10日夜は、ドラム歴数ヶ月目の女性から「この日、私は生まれて初めてステージに出る。多分、死ぬと思う。骨を拾いにきてください」と呼ばれたライブに足を運ぶ。その後、夜行バスで大阪に向かう。11日早朝、大阪駅界隈到着。その後、預けていたバイクを回収に伺い、関東方面に向かって下道を高速で帰る予定だが、どれだけ体力が続くかわからない。これもひとつの基準になるのか。マグマ塩を舐めていると血液を舐めているみたいだ。元気になる。

 

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N様から東ティモールの話を聞いた。東ティモールは、かつて、インドネシア側から「三人に一人は殺された」大虐殺を受けた過去がある。しかし、東ティモールの人々はやり返すと言う選択肢を選ばなかった。銃を握る代わりに、敵対視する代わりに、彼らは『両手をつないで歌を歌う』という道を選んだ。この逸話を聞いた時、N様はひどく心を打たれたと話した。N様がハワイに移住をしたのは、ちょうど、東日本大震災が起きた時期と重なる。大震災などのカタストロフィを前にすると、人は、自分にはなにもすることができないという無力感や虚無感に襲われる。N様も例外ではなかった。しかし、この話を聞いた時に「自分にもできることがある」と思ったのだ。と。キーワードは『悲しみ』と『分断』だった。

 

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分断。このワードは、個人的にも感じることの多い言葉だ。分断。分断。分断。分断するほど、人々は団結する力を失う。私が、私が、となり「私の得が」「私の得が」となる。自分の利益だけを考えると、短期的には得をするかもしれないが、全体感を喪失する。虚無感を生み、終わることのない欲求不満をもたらす。そして『悲しみ』について。N様は、grief(悲嘆)と言う言葉を聞いた時に「ここになら、私も力になれるかもしれない」と思った。N様は、心理セラピストとしてカウンセラーのような働きをしている。N様の恩師は言う。悲しみは力。その言葉に、N様は強い励ましを得たと言う。悲しみは力。悲しみは力。悲しみは力。まだ、自分の中で消化しきれていない、でも、とても重要な要素が『悲しみ』と『分断』のなかにはあるように感じた。飛行機の中、考えがいのあるテーマを与えられた。

 

わたり文庫『わたしに会うまでの1600キロ』

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今回のわたり文庫無料郵送の一冊は、シェリル・ストレイド著作『わたしに会うまでの1600キロ』です。この本は、この数週間、常に隣にありました。自分がしんどい時、本を開くと、シェリルがその何倍もしんどい目に遭っている。そのことがどれだけ励みになったことか。帯も表紙もないボロボロに擦り切れた状態だけど、ご希望される方は何かしらの方法で坂爪圭吾までご連絡ください。最悪な邦題。最高な内容。御当選(?)された方には70万時間以内に折り返しご連絡いたします。

 

※※※ こちらの本は、兵庫県にわたりました ※※※

 

私は母をとても愛して尊敬してたが、子供の頃から母のようにはなるまいと思っていた。母が父と結婚したのは十九歳。妊娠となけなしの愛だけで結婚した。この話は母にせがんでようやく聞き出した。「どうしてそんなことを知りたいの?」母は首を横に振り続けたが、私はあきらめず、最後は母が折れた。妊娠がわかったとき、母はふたつの選択肢を考えた。デンバーで違法な中絶をするか、あるいは遠くの町でこっそり子供を産み、自分の母親に託すか。母親は赤ん坊を自分の子供として育ててもいいと言っていた。でも、母はどちらも選ばなかった。自分の子供として産もうと決め、父と結婚したのだ。彼女はカレンの母親となり、私の母親となって、リーフの母親になった。

 

私たちの母親に。

 

「人生の運転席に座ったことは一度もなかったわ」自分がもうすぐ死ぬと知った数日後、母は泣きながら私に言った。「いつも誰かの言いなりだった。誰かの娘か、母親か、妻でしかなかった。私自身でいたことがないの」

 

「お母さん」私はそう言って、彼女の手をなでることしかできなかった。

 

何かを言うには、私は若すぎた。

 

シェリル・ストレイド『わたしに会うまでの1600キロ』【静山社】

 

軽やかにいけるよ。いまよりももっと。

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飛行機に乗った。出発まであと五分しかない。急いで書き上げなければ。ここ数日間、心がざわざわしてなかなか寝付けない夜があった。そんな時、私は、聞き手役に神様を選ぶ。神様。神に語りかける。今日はこんなことがあったんだ。とか。こんな時はどうすればいいのか。とか。が、その後に、そう言えば祈る時はまず最初に感謝を捧げるものだったよなと思い直す。手当たり次第、思い浮かぶ順番に感謝をする。五体満足であること。ハワイに来れたこと。サポートしてくれるひとがいること。日本に行けば家があること。今夜眠る場所があること。明日食うに困らないカネがあること。こんなに生きたのにまだまだ33歳であること。余命があること。生きていること。私はハッ!と我に還る。なんだ、あるじゃないか。悩み事が消え、神に聞いてほしいことも消える。恐れることはない。足りないものはなにもなかった。

 

「傷ついた?」私は言葉を振り絞った。

 

「そうよ。あなたも同じ場所が傷ついているわ。父親が自分の傷を癒さないと、子供の同じ場所が傷つくの」

 

「ふーん」私は無表情で言った。「六歳から今まで、父には三回しか会っていないわ」

 

「父親の仕事は、子供に戦い方を教えることよ。戦わなければならないときに、馬に乗って戦場に出る自信を与えること。それを父親から教わらなかった人は、自分で学ばなければいけない」

 

「でも ー 私はもう強いわ。立ち向かっている。だって私は ー 」

 

「強いかどうかじゃないの。今はまだわからないかもしれないけれど、時が来ればきっとわかる。何年も先かもしれない。馬に乗って戦いに行かなければならないときに、あなたはためらうかもしれない。ひるんでしまうかも。お父さんがつけた傷を癒すために、あなたは馬に乗って戦士のように挑まなければならないのよ」

 

シェリル・ストレイド『わたしに会うまでの1600キロ』【静山社】

 

私の父親だったことは一度もない人、それが私の父親だ。何回考えても理解できなかった。世の中に最悪のことはたくさんあるけれど、彼が父親として愛すべきように私を愛さなかったことを、私はずっと最悪だと思って来た。でも、PCT(パシフィッククレストトレイル)を歩き始めて五十数回目のこの夜、暗い大地を見つめながら気がついた。父に愛されなかったことにこだわる必要は、もうないのだ。

 

シェリル・ストレイド『わたしに会うまでの1600キロ』【静山社】

 

長距離を歩くと不思議な感覚になる。歩けば歩くほど透明になれる。歩くことと浄化することがイコールになる。もちろん、最初は、くだらないことをああだこうだと考える。が、やがて、歩くことがすべてになる。一歩一歩を踏み出すということ。ただ、それだけのことが自分になる。自分という感覚さえも消えて、境界線が曖昧になる。世界が自分になり、自分が世界になる。どこまでも歩いて行けそうな気持ちになる。そうだ。自分にはこの足があるのだ。関西空港に着いた。空港まで迎えに来て来れたひとがいる。これから合流をすることになった。小さな旅は終わるが、人生は続く。歩くことが浄化されることとイコールになるように、生きることが浄化されることとイコールになるような、そういう生き方をできたらと思う。

 

 

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flower #hawaii #lifeisgood

 

人生は続く。 

 

坂爪圭吾 KeigoSakatsume
keigosakatsume@gmail.com
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