いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

奈々子に。

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熱海に戻り、いま、眠る前に読んでいた吉野弘の詩『奈々子に』が心に響いた。素晴らしい作品に触れると、ひとりでも多くのひとに伝えたい気持ちになる。久しぶりの再開になる「わたり文庫無料郵送の一冊」は、こちらの詩集(ハルキ文庫)になります。言葉はただの感情で、人間の心の動きと一致した瞬間に『言葉は音楽【詩】になる』のだと思う。この詩が、いま、この詩を必要とする誰かに届いたらほんとうにうれしい。ご希望される方は、ブログ記事末尾にある各種連絡先より、何かしらの方法で坂爪圭吾までご連絡ください。御当選(?)された方には、24時間以内に折り返しご連絡いたします。

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※※※ こちらの本は、神奈川県にわたりました ※※※


奈々子に 

赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう

自分があるとき
他人があり
世界がある。

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。
苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

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人生は続く。

静岡県熱海市伊豆山302
坂爪圭吾 KeigoSakatsume
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