いばや通信

ibaya《いばや》共同代表・坂爪圭吾のブログです。

【全人類必読】本当は誰だって何だって出来るんだよ。

f:id:ibaya:20140624123930j:plain

素晴らしい出会いは人生を肯定する。本当に凄い人と出会いました。名前は仮に鈴木さん(68歳・男性)とします。本当にやばくて話を聞きながらずっと興奮していた私は、鈴木さんの話をできる限り脳裏に焼き付けておくべしと強烈に全神経を集中させて話を聞いた。覚えている限りすべてのことを書き出します。

私は今日、新潟市内旧巻町で開催された『ほたるまつり』のイベントの手伝いに行った。会場には緑が豊かな大地が広がり、東屋や木のベンチなどがいくつかあった。非常にのどかな光景だったのだけれど、実はこの東屋も椅子もすべては『この日のために鈴木さんという男性がすべて手作りしたものである』という事実が発覚してから、私達の中で『鈴木さんの話を聞かなければいけない』という強烈なセンサーが起動して、鈴木さんを探し出して様々な話を伺ってきました。

結果、とんでもないことが発覚した。鈴木さんが私たちに話してくれたことを可能な限り殴り書き記します。鈴木さんはとても穏やかな口調で話を聞かせてくれました。

自分の家は30万円位でできたよ。

「東屋も椅子もここにあるほとんどのものは全部自分で作ったんだよ。自分が今住んでいる家も自分でつくったんだよ。大工なんてやったことはないよ。ただ、自分でつくりたいと思ったから作ったんだよ。自分の家は全部で30万円位で出来たよ。電気も全部自分でひいて、電球も全部LEDを使ったら、普通の家庭の10%くらいしか電力を使わない家になったよ。LEDは高いとかみんな言うけど、1年間も住めば十分に回収できる計算だったから、実際にやってみてその通りだったってことがわかったよ」

クレーンも自分でつくったよ。8万円でできたんだよ。

「家をつくるための木は、全部もらったんだ。木を切る仕事を手伝ったときに、余った木をたくさんもらったから材料は全部無料だったよ。家を建てるためにはクレーンが必要だったんだけど、調べてみるとクレーンは一日借りると4万5000円もするってことがわかったんだよ。だから、クレーンも自分でつくったよ。自分でやったら8万円で出来たんだよ。クレーンを二日借りるよりも安く使えることになったんだよ。家をつくるのに1年半くらいかかったんだけど、自分でクレーンをつくったおかげで、自分の好きな時に好きな時間だけ作業ができるようになったんだよ。クレーンは解体すれば鉄くずになるから、作業が終わったら自分で解体して外に出しておいたんだよ。借りたクレーンは解体できないから、自分でつくって良かったよ。今度は別荘をつくりたいと思っているよ。土地もこの前見つけたんだよ」

できるからやったんじゃなくて、やってみたらできたんだよ。

DIYに使う工具も自分でつくったよ。DIYの道具をDIYしたんだよ。ドリルも自分でつくったし、買うよりも自分でつくった方がずっと安くできたよ。今使っているこのバッテリーも、お店で買うと12万円くらいするんだけど、自分でつくってみたら3万円で出来たよ。みんなが使っているこの流し台も(注・この日はほたるまつりが開催されていたために、屋台の人たちが使う流し台が用意されていました)、この前解体した家から持って来たんだよ。僕は家を解体することもできるんだよ。やってみたら出来たんだよ。自分ひとりの体があれば大きな家も解体できることもわかったし、この流し台は壊した家からそのまま持って来たんだけど、これでどこにでも流し台を置けるようになったんだよ」

隣の角田山に1日で11回登ったこともあるよ。

「今は一日15時間くらい働いているよ。だけど仕事と遊びの区別がないんだよ。何をやっているときも楽しいんだよ。今日は祭りだから東屋をつくったり椅子をつくったりしていたよ。畑仕事もやるよ。30種類くらいの野菜を自給しているよ。何でも頼まれることはやるようにしていたら、今では朝から晩までやることが出来てしまって忙しくなってしまったよ。昔から、時間があるときは山にも登るのが好きなんだよ。昔は、隣の角田山に一年間で450回くらい登ったときもあったよ。一日で11回登ったこともあったんだ。日本アルプスも走って登ったよ。なんでそんなことをしていたのかって?トレーニングだよ」

9割の人が、えー、というようなことをやるんだよ。

「僕は今は68歳なんだけど、定年を迎えるまではゴミ清掃員の仕事をしていたんだ。その頃はこの集落でも一番お金がない人だったんだけど、定年を迎えてから自分でなんでもやるようになって、そこから人生が大きく変わったんだよ。働いていたときの給料の4割くらいしか年金はもらえないんだけど、今が一番お金があるよ。9割の人が、えー、というようなことをやるんだよ。そこに金脈があるんだよ。何でも自分でやるとお金を使うことがないから、お金は全部大好きな車に使っているよ。仕事をしていた時は車は2台しか乗り換えたことがなかったんだけど、定年してからはもう8台乗り換えているよ。今では新潟でもほとんど乗っている人のいないベンツのSクラスに乗っているよ。今でも一日1000キロくらい走ることがあるし、この前は新潟から静岡を一日で往復したりしてきたよ」

音楽を聴いていると楽しくなってワクワクしてくるんだ。

「テレビは全然見ないよ。テレビを見ている時間がもったいないんだよ。最近は音楽が好きなんだ。今はロックが大好きで、聞いていると嬉しくなってワクワクしてくるんだよ。この年でロックが好きな人は珍しいかもしれないね。日本の音楽よりも海外の音楽を聴くよ。ラテンとかサンバとかもよく聞くよ。音楽を聴いていると本当に楽しくなってワクワクしてくるんだよ。今は、毎日が本当に楽しくて、生きていることが嬉しいんだ。若い人と話をするのも大好きだよ。若い人と話していると、自分も一緒に若返れるような気がするんだよ。気持ちだけなら若い人には負けないよ。今でもたくさん働くし、行動だってすぐにするし、若い人にも負けない元気はあるよ」

自分にはなかなか、なんてことはないんだよ、やらないかやっちゃうかなんだよ。

「口で言うだけじゃダメで、何でも実際にやってみたほうがいいと思っているよ。なんだって実際にやらないと身につかないことがあると思うんだ。誰かにお願いされたことは、全部やるようにしているよ。何も断らない。この前読んだ本にも同じことが書いてあって、自分と同じ考え方の人がいるんだなって思ったよ。どんなお願いごとでも全部聞いて、それからどうやってそれをやるのかを考えるんだよ。どうやったらひとりでできるか考えて、あ、これならいけそうだなって思ったらそれをやってみるんだ。これはひとりではとてもじゃないけど難しいなと思ったら、誰かの力を借りるんだよ。自分にはなかなか(できない)なんて考えちゃダメだよ。なかなかなんてことはないんだよ。やらないかやっちゃうかなんだよ」

ありがとうって言ってもらうために、お金は使うものだと思ったんだ。

「僕が7歳のときに僕の父親は死んでしまって、僕の母親は4人の子供を突然ひとりで養わなければならなくなってしまったんだ。お金も全然なかったんだよ。もしも、何もない中で突然4人の子供を育てなくちゃならなくなったら、あなただったらできますか?あの頃はほんとうに大変だった。だけど、母親はみんなの力を借りながら、どうにか4人の子供を育てることができたんだ。母親からもらった影響はとても大きかったよ。お金は自分のために使うんじゃなくて、誰かのために使ったほうがいいんだってことがわかったんだ。この前も、近所の人の屋根を舗装したんだ。今まで舗装なんてやったことはなかったけど、その人は困っていたから、それなら僕がやるよと言って、僕がお金を出して屋根を舗装したんだ。やってみたらできたんだよ。ありがとうって言ってもらうためにお金は使うものだと思ったんだよ」

「何だって?師匠にしてください?この前も、そう言って若い人がうちに来たことがあったよ。我が家はいつでも来てもいいよ。泊まっていってもいいよ。僕みたいな生き方は珍しいかもしれないけれど、今は本当に毎日が楽しいよ」

生きていることが楽しいんだ。

鈴木さんは非常にのんびりした方で、常におだやかな口調で私たちに話して聞かせてくれた。何かを自慢するわけでもなく、ただただ淡々と自分がやってきたことを話して聞かせてくれた。これがほんとうの百姓の姿だと思った。百姓とは「百の仕事を持つ人」のことでもあり、鈴木さんはまさに現代のお百姓様でした。高齢であるにも関わらず肌は誰よりも日焼けをしていて、瞳は爛々と輝いていた。

本当に素晴らしい出逢いでした。日が沈み鈴木さんの話を聴き終えた私たちは、灯篭の灯りがある森の中を進んでほたるの鑑賞をした。ほたるの輝きもまた非常に素晴らしいものだった。本当に充実した一日だった。鈴木さんとの出会いは強烈で、この記事を書いている今も楽しさと嬉しさで興奮しています。感服しました。完敗しました。感動しました。生きていることは素晴らしいことだと思いました。私も頑張ろう。鈴木さんは何度も何度も「生きていることが楽しいんだ」って静かに穏やかに言葉にしました。理由はわからないけれど、涙が流れそうになるくらい嬉しくて楽しくて鈴木さんの破天荒ぶりに爆笑しました。本当は誰だって何だって出来るんだよ。穏やかな口調で話す鈴木さんの声が、何度も何度も繰り返し、胸の中で鳴り響いている。素晴らしい出会いは人生を大きく肯定する。

人生は続く。
 
坂爪圭吾 KeigoSakatsume/ibaya 
LINE:ibaya  07055527106 keigosakatsume@gmail.com